防水改修工事では、2つの側面から工法を知る必要があります。
第一にゴムシートやアスファルトシート、ウレタンなどの材料による工法、いわゆる防水工法があり、もう一つは、現状の屋根の防水(層)に対し、上から施工するのか、すべて撤去してから施工するかといった改修工法があります。
実際の工事では、まず改修工法を決定し防水工法を決める流れとなります。
現場で液状の防水材料を塗り、化学反応で防水の膜をつくります。
細かい作業が必要な屋根やベランダなど、歩行を伴う場所の防水に有効です。
現場施工のため、一定の厚みの確保が難しい面がありますが、さまざまな場所で施工できます。
ゴムや塩化ビニルでできたシート状の防水材を下地に貼りつける工法です。
最大のメリットは、簡便性。機械的固定工法では下地処理を簡便化しての改修工事が可能。
一方で外部損傷にやや弱く、施工管理がより重要になってきます。
「塗る」防水よりも下地の影響を受けにくい特徴がありますが、シートのつなぎ目処理に職人の技量差が出やすい面があります。
溶融アスファルトと、防水性の高いアスファルトシートを積層し、厚みのある防水層をつくります。
2層以上の積層工法が原則で、水密性・耐久性とも高く、ヒューマンエラー(施工の不具合)の出にくい工法です。
アスファルト溶融時に、臭いと煙が発生するため、近年の改修工事では、以下のように作業環境に対応した常温粘着工法・トーチ工法などがラインナップされています。
※耐用年数の目安は建設省総合開発プロジェクト(昭和55〜59年)の「建築防水の耐久性向上技術」資料より
従来のアスファルトよりも耐久性を向上させた、改質アスファルトを原料としたシートを、裏面に付いているゴムアスファルトの粘着材で貼りつけていく工法です。
常温粘着工法と同じく、耐久性の高い改質アスファルトを原料としたシートで、裏面をトーチバーナーと呼ばれる大型バーナーであぶって貼り付ける工法。
既存防水層を全面撤去し、新築時の下地に新規防水層を施工します。
既存防水層の不良部のみを撤去し、適切な下地処理を施した上で、新規防水層をかぶせて施工します。
かぶせ工法の一種。 既存防水層の上から、下地に穴を開けて新規防水層をアンカー固定する。
撤去工法 | かぶせ(再生)工法 | 機械的固定工法 | |
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騒音 | 既存撤去の際に騒音、振動が発生 | 騒音、振動は少ない | アンカー固定の際に騒音、振動が発生 |
工期 | 撤去工事期間分工期が長引く | 撤去工法に比べ工期短縮が可能 | 撤去工法に比べ工期短縮が可能 |
コスト | 撤去工事、廃材処分費の計上が必要 | 撤去工法に比べ安価 | 下地処理が簡略化できるため安価 |
作業 | 廃材搬出等周辺に対しての危険作業あり | 周辺環境に対して安全性が高い | 周辺環境に対して安全性が高いが騒音が発生する |
養生 | 撤去後防水層施工前の漏水への配慮が必要 | 既存の防水性能が期待できる | 既存防水層の機能が完全に失われる |
環境 | 撤去廃材は産業廃棄物に該当する | 産業廃棄物が少ない | 産業廃棄物が少ない |
新規 防水 | 様々な工法の選択が可能 | 既存と新規の防水材料の相性を考慮する必要あり | ALCなど下地構造の問題を除き、既存防水層との相性を考慮せずに採用が可能 |
考察 | 既存防水層が撤去すべき状況の場合には、撤去工法を採用しながら、次回回収時にはかぶせて改修が可能な改修仕様を選定すればメリットがある。 | 既存防水層を再度下層防水層として利用しながら、新規防水層を形成するため、信頼性・耐久性が高い。 | 既存防水の状態が非常に悪い際にはメリットあり。 |
工期やコスト、信頼性を総合的に踏まえ、
かぶせ工法が現在の主流です。
どんなにハイグレードな防水材料を使っても、防水層の裏側に水が廻ったら漏水してしまいます。
改修工事では、今ある条件を活かし、防水層の裏側に水が廻らない仕組み「納まり」をつくります。
標準的な新築時の納まりは上の図のような仕様ですが、改修工事の場合は、経年劣化等による笠木部分の傷み具合に応じて、再度塗膜防水や別途水切りを設けるといった作業を行います。
まれに、「納まり」をしっかり考慮していない建物もあります。
防水改修工事は、経験や専門知識をもった業者へ依頼することがおすすめです。